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![]() 日没付近車内明るさと視機能VisionClub Car Report Vol. 16 日没前後の照度変化は、非常に大きい。特に車内ではルーフもあることからかなり眼内入射光量が減少する。そのため、瞳孔散大に伴う収差・散乱の影響で視機能は低下しやすい環境となる。目は慣れて見えていると思い込んでいるが、視機能は低下しているため注意が必要である。 | ![]() 自動運転車から見られるためにVisionClub Car Report Vol. 15 自動運転にはLiDARが注目されている。このLiDARは、light detection and rangingの略でレーザーを使って対象物までの距離を計測して物体の検知を行うことができる。この画像は、LiDARで計測して可視化したものであるが、いわゆるコンピュータが見る世界ということになる。LiDAR以外の画像センシング技術は、照明が少ない場合とくに影響が大きい が、LiDARはその欠点を補える。ただし、LiDARの苦手なシーンとして、雪や霧、雨などがあり、光が散乱してしまうシーンは、苦手である。このLiDARの受光強度における式の中に対象物の反射率が入っている。つまり、LiDARは、反射率の高いものを捉えることが得意ということになる。最終的には、得られた画像の特徴を捉えて人として検知する仕組みに依存するが、反射材や明るい服を着ることも将来的には自動運転車に見てもらうために重要かもしれない。 参考・抜粋 1) 伊東敏夫.自動運転のためのLiDAR技術の原理と活用法,科学情報出版株式会社,2020 | ![]() 視認性の高いファッションで交通事故防止VisionClub Car Report Vol. 14 夕暮れ時〜夜間の交通事故防止には、歩行者はドライバーから気づかれやすい蛍光色あるいは反射材を身につけると良いとされているが、それらには若干劣るものの、実はその他にも視認性の高い色合いは存在する。 夕方のもっとも交通事故が多い時間帯に自動車がブレーキをかけてから歩行者の1m手前で停止できるような条件を探った結果、白/黄、白/赤、白/黄赤、白/緑など色合いで、5.9cm幅のストライプの服を着ると視認性が高いことがわかった。 これらの色合いは、日常的な服装にも比較的取り入れやすいので、ぜひファッションも楽しみながら交通安全を意識 していただきたい。 ちなみに、その次に視認性が高かったのは、白/青、白/赤紫、黒/黄、などの組み合わせである。 参考・抜粋 1) 川守田拓志ら.一般色および蛍光色における色コントラストと視認性,第61回日本産業・労働・交通眼科学会,2019 |
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![]() 白内障患者の自動車運転時危険性の無自覚VisionClub Car Report Vol. 13 加齢白内障は、60代で約7割、70代で約8割、80代以上でほとんどの人が経験するとても身近な病気である。白内障になると、とくに夜間の車の運転中に「眩しさ」や「見えにくさ」を感じる1)。 しかし、そのような症状があっても、運転が難しいことを自覚できず、運転を続けている人は多い。 白内障手術を希望した117名に対する調査では、「運転が難しい・とても難しい」と回答した割合は夜間の運転で約20%、見えにくさにより運転をやめた人は約4%にとどまった2)。 別の調査では、「加齢により補償運転を行なっているが、自身の運転を過大評価する傾向」も確認されているため3)、今後白内障患者に対して危険性を呼びかけていく必要があるだろう。 参考・抜粋 1) 眼科IC支援システムiCeye(東京都眼科医会監修),有限会社ミミル山房,2016 2)川守田拓志ら.白内障眼の自動車運転に関する主観評価と視機能の関係,第57回日本白内障学会総会・第44回水晶体研究会,2018 3) 松浦常夫.高齢ドライバーの安全心理学,東京大学出版会,2017 | ![]() サイドミラーは進化しているVisionClub Car Report Vol. 12 車のサイドミラーが電子ディスプレイに変わるかもしれない。 通常の光学ミラーの代わりに小型カメラを置き、その映像を車内に設置された電子ディスプレイで見られるようにするというものだ。 これにより得られるメリットは主に2つある。 一つは、夜間時や雨天時などの見えにくくなっている視環境を大きく改善すること。 もう一つは、サイドミラーやピラー(車を支える柱)による死角の問題を改善することだ。 より視認性が高い車内条件が確保できることで、交通事故の減少につながることを期待したい。 ちなみに、バックミラーのディスプレイ化は、すでに日産自動車が液晶ディスプレイと通常の光学ミラーとを切り替えられる「スマート・ルームミラー」というものを開発している。 | ![]() 眼瞼下垂は信号の見落としにつながるVisionClub Car Report Vol. 11 まぶたが下がってくる眼の病気「眼瞼下垂」は、上方視野を狭くし、運転中に信号を見落とす原因になる。 眼瞼下垂は、加齢やハードコンタクトレンズの長期使用、神経に問題がある場合に起こりうる。 正常な視野では、上方は60度程度見えるが、眼瞼下垂があると20度まで低下する。 この場合、13.7mより近づくと、高さ5.0mの位置にある信号が消えてしまう計算になり、注意しなければ信号を見落としてしまうかもしれない。 このように、様々な眼の病気が間接的に交通事故の増加を導いている可能性がある。 参考文献 1) 加茂純子ら.英国の運転免許の視野基準をそのまま日本に取り入れることができるか? 眼瞼挙上術と視野の関係から推察,あたらしい眼科 25,891-894,2008 |
![]() 緑内障の交通事故のリスクは約6.6倍VisionClub Car Report Vol. 10 緑内障になると視野が障害されるため、運転中に歩行者などの危険対象の見落としにつながる。 緑内障の交通事故のリスクは、約6.6倍。40歳以上の日本人における緑内障有病率は5.0%、つまり20人に1人が緑内障患者であると報告されている。 緑内障は、眼と脳をつなぐ視神経と、人が見える範囲である視野に変化をきたす疾患。眼の中に満たされている「房水」の循環に異変が起こり、眼圧を一定に保てなくなったときに神経がダメージ を受け、視野が障害されてしまうのが一般的な症状だ。 現段階では、一度緑内障によって障害された視野は元に戻らない。よって、早期発見と早期治療によって進行を遅らせることが大切だ。 参考文献 1) 日本緑内障学会,日本緑内障学会多治見免学調査報告書,2012 2) S.A Hayme et al.Risk of falls and motor vehicle collisions in glaucoma. Investigative ophthalmology & visual science 48,1149-1155,20 | ![]() なぜ見晴らしのいい交差点で事故が起こるのかVisionClub Car Report Vol. 9 見晴らしのいい田園地帯の交差点で必発する交通事故。 一見不思議な現象に感じるが、これは人の視覚の特性により引き起こされる。 人の周辺視野は、視力が低く、動きがないものに対して認識が弱まる。 2台の自動車が交差点に向かって走行し、45度の位置に互いの車両が映る場合、車同士が交差点に近づいても常に同じ位置に相手車両が映るため、存在に気づけないことがある。 これを、コリジョンコース(そのまま走行していると衝突してしまうコース)という。 Hondaセーフティナビ(本田技研工業社)というシミュレーターを用いた実験によると、予想を大幅に上回り、50名のうち7名で事故が起こった。しかし、別の対象者には「交差点で左右を確認してください」という単純な教示をかけただけで、事故が1件もなくなった。知ることの重要性をあらためて認識させられる。 参考文献 1)安藤有紀,古荘善子,松島実奈,渡辺あかね,川守田拓志.北里大学医療衛生学部視覚機能療法学卒業研究,2016 | ![]() 都市部の交差点で頻発する事故VisionClub Car Report Vol. 8 都市部の交差点では、ドライバーは低速で進んでいることが多いにもかかわらず、歩行者や車両との接触事故が後を絶えない。 目の奥に危険対象が映っているはずなのに、事故はどうして起こるのか。 人は、高いコントラスト(明暗度)や明るいもの、輪郭、人の顔などの視覚的要素に注意が向きやすい。都市部のような混雑状況ほど、中心で見ているものに複雑な処理が要求されるほど、周囲の情報処理を弱めてしまい、有効視野が狭くなって事故につながる。 ドライバーは、都市部の交差点では必ず速度を落とし、周囲に注意を配ること。 歩行者は、ドライバーから気づかれていないかもしれないと疑って歩くことが大切だ。 参考文献 1) T.Miura. Visual search in intersections - An underlying mechanism - International Association of Traffic and Safety Sciences Research 16, 42-49, 1992 |
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